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最高裁判所第三小法廷 昭和27年(あ)4864号 判決

主文

本件各上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人両名の負担とする。

理由

各被告人並に弁護人岸永博の上告趣意は末尾添附別紙のとおりである。

被告人両名の上告趣意各点、弁護人岸永博の上告趣意について。

所論は、原判決は結局憲法二一条に違反するというに帰する。しかし憲法二一条に定める言論の自由の保障といえども無制限なものではなく、公共の福祉に反する限度においては制約を受けるものであることは、従来当裁判所の判例とするところである(昭和二三年(れ)第一三〇八号同二四年五月一八日大法廷判決、集三巻六号八三九頁参照)。

本件においては、一審判決挙示の証拠により認め得られるように、昭和二六年四月当時判示のような言説を佐賀県下、山間僻地所在の駐在所に勤務する一地方警察吏に対し、判示の如き手段で告知することはその言説内容と、公知の客観的状勢と相俟って一の具体的、客観的害悪の告知であると解すべく、そしてこのことは普通一般人の誰れもが畏怖を感ずるものと認め得られるのであるから、かような言説の告知は刑法所定の脅迫たるを免れない。してみれば所論の理由のないことは前示判例の趣旨に徴して明らかである。

また記録を調べても本件につき刑訴四一一条を適用すべき事由も見当らない。

よって同四〇八条一八一条により全裁判官一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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